介護で575
人生の 自慢は妻と 結婚さ

仏壇の前で聞いた言葉
Jさんのお宅を訪問した時のことです。
奥様のご仏壇に手を合わせていると、Jさんがぽつりと話されました。

俺の人生で一番の自慢は、
この奥さんと結婚できたこと
そして、少し間をおいて、



一番の誤算は、
奥さんが先に逝ってしまったこと
そう話されました。
一番の自慢と一番の誤算
Jさんの奥様は、Jさんより五歳年下だったそうです。



俺より五歳も年下で、
女性のほうが寿命が長いのに、
なんで先に行くかなぁ
そう言いながら、その言葉には怒りというより、寂しさと愛情がにじんでいました。
奥様が先に旅立たれたことは、Jさんにとって本当に大きな誤算だったのだと思います。
でも、その奥様との結婚を、今でも人生で一番の自慢と言える。
その言葉を聞いて、私は胸が温かくなりました。
奥様の分も長生きしてくださいね
私は思わず、



奥様の分も、
人生を楽しんで長生きしてくださいね
と声をかけました。
するとJさんは、少し笑いながら、でも真面目な顔でこう言いました。
「あんたさぁ、長生きするって容易じゃないのよ」



あんたさぁ、
長生きするって容易じゃないのよ



いつまで元気か?
いくらかかるか?
全く予定がつかないんだからさぁ
確かにそうだと思いました。
長生きは、ただ年を重ねるだけではありません。
体のこと。 お金のこと。 暮らしのこと。
先の見えない不安も、一緒に抱えていくことなのだと思います。
予定がついても忘れちゃうけどさ
でも、そこで終わらないのがJさんです。
少し間をおいて、



まっ!
今の俺は、
予定がついても忘れちゃうけどさ
そう言って、笑っていました。
ご自身の物忘れさえ、笑いに変えてしまうJさん。
その余裕に、私はいつも驚かされます。
もちろん、認知症の不安や不便さはあるはずです。
それでも、自分の今を笑いにできる。
その姿に、私は人生のプロのような強さを感じます。
言われてみたい言葉
「俺の人生で一番自慢できることは、奥さんと結婚できたこと」
こんな言葉、言われてみたいなと思いました。
奥様も、Jさんも、きっとお幸せだったのだと思います。
先に逝かれた寂しさは消えなくても、人生の一番の自慢として奥様のことを語れる。
それは、とても素敵な夫婦の形だと思いました。
10分の道のりで聞ける話
Jさんとは、地域活動の集合場所まで、毎回10分ほど一緒に歩きます。
その短い道のりの中で、Jさんは本当にいろいろな話をしてくださいます。
奥様のこと。 ご自身のこと。 認知症のこと。
そして、長生きすることの本音。
その一つひとつの言葉に、Jさんの人生が詰まっています。
私にとっても、Jさんと歩きながら話を聞ける時間は、とても楽しみな時間です。
認知症になっても、人生の誇りは消えない。
大切な人を思う気持ちも、消えない。
Jさんの言葉から、そんなことを教えてもらっている気がします。
Jさんシリーズ:毒を吐くのは自己防衛



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